教えて、ミーティアさま!
ミーティア「ふっふっふっ……。ついにきた。あたしにも座談会でスポットライトが当たる日が……!」
アスロック「まあ、『第一回、なんでもQ&A!』ではニーナが、『教えて、イリスちゃん!』ではイリスフィールがそれぞれメインを張ってたもんなぁ。しかし、『教えて、ミーティアさま!』というタイトルはいかがなものか……」
ミーティア「いいじゃない! あたしらしくて!」
アスロック「そりゃ、別にケチをつけるようなことじゃないけどさ、それを『自分らしさ』っていうのは、やっぱり問題あると思うぞ?」
ミーティア「う、言われてみれば確かに……。というか、開始早々から話を脱線させるな! まったく久しぶりの登場だっていうのに、相変わらずなんだから……!」
アスロック「悪い悪い。――でもさ、本当に久しぶりだよな。前回の座談会が1月上旬で、最後に『単発物』がアップされたのが2月上旬だったから……」
ミーティア「もう、かれこれ八ヶ月も執筆していないことになるのね、作者。やれやれだわ。……って、いまはそんなことどうでもいいんだって!」
アスロック「おっと悪い。また脱線させちまってたか」
ミーティア「ま、まったくもう! アスロックはこれだから……!」
アスロック「なあ、ところでミーティア。さっきから気になってはいたんだが、お前の持っているフラスコの中に入っているのって、透明な水、だよな? 一体どういうものなんだ? ただの水にしてはこんなところに持ってくる意味がわからないし」
ミーティア「うん? これ? これはね、この座談会のために用意した魔法の品(マジック・アイテム)よ。それも本編ではボツ扱いになった、ね」
アスロック「ボツに? またなんで?」
ミーティア「まあ、その理由に関してはおいおい話していくことにするとして。とりあえずアスロック、これ飲みなさい。ググーッと飲んじゃいなさい」
アスロック「え? なんでお前、酒を勧めるようなノリで正体不明の魔法の品を飲ませようとしてるんだ?」
ミーティア「大丈夫。無色透明かつ無味無臭だから」
アスロック「いや、おれが問題にしてるのはそういうことじゃなくて、これの効果のことなんだが!」
ミーティア「いいから飲め! すぐ飲め! とっとと飲め! 話が進まないでしょうが!!」
アスロック「わ、わかったよ……。まあ、命に関わるような物を飲ませはしないだろうしな、さすがのお前も」
ミーティア「当たり前でしょ! というわけで、いーっき! いーっき!」
アスロック「へいへい……。しかし、なんだな。フラスコに入っている水を飲むのって、なかなかにいい気がしないもんだな。……よし、飲んだぞ」
ミーティア「じゃあ、アスロック。ちょっとここに書いてある文章を読みあげてみて」
アスロック「いま、一体どこからホワイトボードを……? まあいいや、座談会でこういうことにいちいち突っ込んでいたら負けだ。……ええと、なになに?」
『相手が悪かったな!』
アスロック「足が臭かったな!」
ミーティア「あははははっ! 効いてる効いてる!」
アスロック「おい! いま、おれ変なこと口走ったぞ!! 一体どうなってるんだ!?」
ミーティア「うんうん。これ、本人に自覚があるのが辛いところなのよね〜。それはそれとして、次の文章はこれ。はい!」
アスロック「う、まだやるのか……。ええと?」
『おとなしく剣を捨てて投降しろ!』
アスロック「おとなしくスプーンを使って世界一周しろ!」
ミーティア「あははははっ! ねえ、なに意味不明なこと言ってんの? アスロック? ……ぷぷっ!」
アスロック「おれのほうが訊きたいよ! おれはなんで意味不明なことを口走ってるんだ!? ちゃんとホワイトボードに書いてある文章を読みあげてるはずなのに!」
ミーティア「それはほら、たまにあるじゃない。自分ではちゃんと正しい言葉を言ったつもりでいるのに、口からは違う言葉が飛び出ちゃってるっていうこと」
アスロック「確かにたまにはあるけど! それにしたってここまでかけ離れた言葉が出てくるってことはないだろ!」
ミーティア「そうね。じゃあ、そろそろこの魔法の品の効果を教えてあげるから、その前にこの言葉を口に出して読んでみなさい」
アスロック「……ヤだ」
ミーティア「む、反抗的」
アスロック「これ以上わけのわからない言葉を連発して頭のおかしい奴だと思われるのはゴメンだ!」
ミーティア「ふうん。言わないなら、あなたが飲んだ魔法薬の効果をなくすための中和剤、作ってあげないわよ?」
アスロック「こ、この悪魔あぁぁぁぁぁぁっ!!」
ミーティア「ほらほら、中和剤が欲しかったら、この言葉を言ってみなさい!」
『おれが本気になれば、こんな奴は敵じゃないさ』
アスロック「……なんだろう。セリフのチョイスそのものはまともというか、格好いいものばかりなのになぁ。それがことごとくお笑いワードに変換されるというのがなんとも……。ええい、ままよ!」
ミーティア「お、アスロックの中でなにかが吹っ切れたようね。……あ、ノリノリでポーズまでとり始めたし」
アスロック「『おれが本気になれば、こんな奴はアルマジロさ!』」
ミーティア「…………」
アスロック「……うぅ」
ミーティア「……うん、まあ、『アルマジロ=(モンスターよりも遥かに)弱い=敵じゃない』という意味なのはわかったわ。でもポーズまで決めて言うことかなぁ、それ」
アスロック「う、うわあぁぁぁぁぁっ! もう嫌だあぁぁぁぁぁっ!!」
ミーティア「まあまあ、落ち着きなさい、アスロック。あなたがさっき飲んだのは『ミスティトマ』っていう魔法薬でね、端的に言うなら、パーティーグッズの一種なのよ」
アスロック「……パ、パーティーグッズ?」
ミーティア「ええ、そう。笑いをとるためだけに魔法の品を使うなよってツッコミはもっともだけれど、ボツ設定では使われてたのよね、どういうわけか」
アスロック「で、具体的な効果は?」
ミーティア「いくらあなたでもなんとなく想像はついてると思うけど、なんとね、格好いいことや決めゼリフを言おうとしたりすると、それがバカっぽい発言となって口から出てくるの。シリアスな場面では絶対に服用しちゃいけない薬ね」
アスロック「一体、誰がなんのためにこんなものを……。や、パーティーグッズだってことはわかってるんだが、それにしたって……」
ミーティア「あ、一番最初に作った人はもちろん、パーティーグッズにするつもりはなかったそうよ?」
アスロック「うん? というと?」
ミーティア「その前に、はい、これ」
『ハーッハッハッハッハッ! 笑わせてくれるな!』
アスロック「また言うのか。しかも今度は高笑いまで混じってるし。――『ハーッハッハッハッハッ――ゲホッ! ゲホゲホッ! く、苦し……! 笑いタケ、もう一個な!』」
ミーティア「笑いタケ……?」
アスロック「なんだいまのおぉぉぉぉぉっ!?」
ミーティア「とりあえず、シリアスな場面でいまのセリフが出てきたら、ぶち壊しになること間違いなしね」
アスロック「もうちょっとマシな方法でぶち壊してほしいもんだ!」
ミーティア「で、説明においてもっとも必要とされる言葉が、これ」
『おれ、丸暗記だけは得意なんだ』
アスロック「あれ? 特別格好いいセリフではないような……?」
ミーティア「いいからいいから。ほら、早く言った言った」
アスロック「へいへい。――『おれ、丸暗記だけはパンなんだ』」
ミーティア「よし、格好よくはなくても、決めゼリフである以上、やっぱり効果が出たわね。……でも、なんでパン?」
アスロック「それはおれが訊きたいよ。おれ自身はちゃんと『丸暗記だけはパンなんだ』って言ってるつもりなんだから……って、あれぇ!?」
ミーティア「はいはい。『得意なんだ』って言ってるつもりではいるのね。大丈夫、ちゃんとわかってるから」
アスロック「…………。まあ、わかってくれてるのなら、いい。しかし、本当になんでパン……?」
ミーティア「ええ、これだけはあたしにも謎だわ」
※ドラ○もんという漫画には『暗記パン』という秘密道具が出てきます。
ミーティア「それはともかく。この魔法薬は元々、パーティーグッズなんかじゃなくて、相手の呪文詠唱を阻止するために作られたものだったりするのよね。ほら、呪文の詠唱って無駄に格好いいから」
アスロック「ああ、なるほど。どれだけ正確に唱えようとしても、実際に口から出てくる言葉はただのお笑いワード。最後までなんて絶対に唱えられない、と?」
ミーティア「そういうこと。そんなわけでアスロック、ちょっと唱えてみようか? 例えば、暗闇の刃(リッパー・ブレード)とか」
アスロック「いや、おれはそれ使えないし」
ミーティア「重要なのは使えるか否かではなく、詠唱することそのものなのよ。ほら、これをやったら中和用の魔法薬、作ってあげるから」
アスロック「わかったわかった。でも、おれは暗闇の刃(リッパー・ブレード)の詠唱文を知らないぞ?」
ミーティア「大丈夫! ちゃんと用意はできてるから! さあ、早速読みあげちゃって!」
『闇の世界を統べるもの
虚無(うつろ)の一部を持ちしもの
汝 闇を扱うもの
汝の力は我が力
我が力は汝の力
我が力の呼びかけに応え
汝の扱う闇の剣(つるぎ)を我に借したまえ!』
アスロック「ノートの上を滑るMONO消しゴム
ちぎって投げていたら一部だけになってしまったMONO消しゴム
ああ 真っ黒になってしまったMONO消しゴム
お前の消しゴムは俺のもの
俺の消しゴムも俺のもの
わかったのならすぐに応え
世界中のMONO消しゴムを俺のところに持ってきたまえ!」
ミーティア「なに、その消しゴム賛美。そんなに消しゴムって重要なものなの? インクで書いた文字は消せないのに」
アスロック「文句はお前の飲ませた『ミスティトマ』っていう魔法薬か、その製作者に言ってくれよ! そして早く中和剤を作ってくれ!」
ミーティア「了解了解。あー、面白かった」
アスロック「人に散々恥ずかしい思いをさせておいてそのセリフ……。お前、やっぱり悪魔だ!」
ミーティア「あー、うん、まあ、今回ばかりは否定できない、かなぁ」
アスロック「殊勝なこと言って苦笑いしてりゃ許されると思ったら大間違いだぞ!」
ミーティア「あ、やっぱり中和剤作るのやめよっか?」
アスロック「ごめんなさい調子乗りましたミーティアなら苦笑いしてるだけで許されますよねなので中和剤よろしくお願いします」
ミーティア「よろしい。それでね、これが本来の用途で使われない理由なんだけど――」
アスロック「いや、そんなことよりも早く中和剤を――」
ミーティア「まあまあ、焦らないで聞きなさいなって。ほら、ぶっちゃけこれって実際に相手に飲ませるとなると、なかなかに難しそうでしょ? 飲み物に混ぜておくっていうならできなくもないけど、いきなり戦うことになった魔法使い相手に飲ませるなんてほぼ不可能に近いし」
アスロック「ああ、そう言われてみればそうだな、確かに」
ミーティア「で、すっかりパーティーグッズとして定着しちゃったわけよ。――と、まあ、ここまでが表の事情」
アスロック「表? 裏の事情もあるのか?」
ミーティア「裏っていうか、作者的なメタな事情、ね。ぶっちゃけ、毎回毎回『これ、面白そう』と思えるようなギャグを考えるのが大変だったみたいで」
アスロック「本当にぶっちゃけたな、おい」
ミーティア「あと、シリアスなシーンになったときにこれを服用したままの状態でいたりなんかしたら、色々と台無しになっちゃうしね」
アスロック「ギャグからシリアスへの移行は、意外とその場のノリで行われるからな。確かにセリフのひとつひとつに気を遣うのは大変そうだし、うっかり格好いい言葉をそのまま言わせちゃったりもしそうだ」
ミーティア「うん。そういった諸々の作者的事情から、ボツアイテムになったの。まあ、まさかこうして日の目を浴びる日がくるとは、作者自身も思ってなかったようだけど」
アスロック「座談会はなんでもアリの場だからな。ボツアイデアでも使えてしまうあたりが恐ろしい」
ミーティア「さて、じゃあそろそろ中和剤の調合にとりかかりますか」
アスロック「待ってました!」
ミーティア「と、言いたいところなんだけど……」
アスロック「うん? どうした? ミーティア」
ミーティア「この調合、実はあたしにはできなかったり……」
アスロック「なっ! おまっ! それを盾に散々おれを脅しておいて!」
ミーティア「や、悪いとは思ってるわよ。というわけで、ちょっとドローアかサーラに頼んでくるから」
アスロック「お、おい! ちょっと待て! 待ってくれ! おれはいま、決めゼリフが言えないんだ! 座談会の締めのセリフ、おれには言えないんだよぉ〜!」
アスロック、逃げるように去っていくミーティアを追っていき、幕。
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